大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和29(あ)1999 判決

主 文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理 由

弁護人佐々野虎一の上告趣意第一点について。

所論は判例違反をいうが、第一審判決の事実認定を是認した原判決は、所論のよ

うに被告人がA農業協同組合連合会の収入伝票に三八万円を入金した旨を記載せし

めた上、更に購買品売却帳に同額の入金があつた旨を記載せしめたこと(この事実

は、被告人の任務に背いた行為の一部を判示したものと認められる)を目して、右

連合会は三〇万円の債権を失つたから、同額の損害を蒙つたものであることを認定

したものでないことが判文上明らかであるから、所論は原判示に副わない事実を前

提とする主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

同第二点について。

記録によると、原審は、弁護人の出頭した第二回公判期日において、職権により

事実の取調をする旨を告げ、更に不出頭の被告人に対し証人尋問の日時、場所を適

法に通知し、昭和二九年三月五日甲府地方裁判所において、B外五名の証人尋問を

行つた際、被告人はこれに立ち会わなかつたけれども、弁護人内藤亥十二がこれに

立ち会つて右各証人に対してそれぞれ反対尋問をしていることを認めることができ

る。かかる場合には、被告人の憲法三七条二項の権利保護に充分な機会を与えたも

のということができることは、昭和二五年(あ)六四一号同二七年二月六日大法廷

判決(集六巻二号一三四頁)及び昭和二七年(あ)一八三〇号同二八年八月一八日

第三小法廷判決(集七巻八号一七四二頁)の趣旨に徴し明らかである。それゆえ論

旨は採用できない。

被告本人の上告趣意は、事実誤認の主張を出でないものであつて、刑訴四〇五条

- 1 -

の上告理由に当らない。

また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて同四〇八条、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決す

る。

昭和三一年七月二七日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 栗 山 茂

裁判官 小 谷 勝 重

裁判官 谷 村 唯 一 郎

裁判官 池 田 克

- 2 -

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!